福知山市児童発達支援センターすきっぷ

すきっぷ

【おくむら先生の七色のひきだし】

~気持ちの切り替え~

「もっとやりたい。」

「もっとこのおもちゃを使って遊びたい。」

「(楽しいから)もっとここにいたい。」

という子どもの純粋な要求が通らなかったとき子どもたちは自分の気持ちをどんな風に表すでしょうか?

療育場面でのできごとです。朝からなんだかとげとげしていて、いつもならニコニコしながら朝の挨拶をしてくれるAくんがいつもと様子が違います。なんだか不安と不満を抱えている様子での登園でした。朝の自由遊びの時間は大好きな列車のおもちゃで黙々とレールをつなぎ気持ちを落ち着けているかのように遊んでいたAくん。その日の運動遊びのテーマは『忍者』。ストーリーにそって忍者になりきって動き、先生たちにいっぱいほめてもらいながら『かっこいい自分』を確かめることができ気分は高揚してきました。特に高いところに登って飛び降りるコーナーはお気に入りの何度も挑戦したいコーナーで、「もう一回やりたい。」「○○ちゃんおそいなぁ。先に行きたい。」という思いも何とかコントロールしながら順番を待ち、スムーズに参加できていたAくんでした。しかし、先生が「あと1回ずつだよ。」と伝えた瞬間でした。「いあやだー!もっとするぅ-!」と急に気持ちを崩してしまい、まだ挑戦している友だちの邪魔をしたり、セットを壊しかけたり気持ちのコントロールが利かなくなってしまいました。よほど楽しかったのでしょう。

スタッフはAくん気持ちを受け止め、邪魔をしたり、崩してしまったりする行為をいちいち叱責はしませんがそのことについての声かけはあえてせず(意図ある無反応)、「もうおしまい。」のメッセージを伝えるため黙々と片付けます。一番お気に入りのコーナーはあえて最後に残します。「あと1回だけ特別に。」を許すためです。それでもうまく切り替えることができず大型マットの上でカタツムリのように丸まって動かなくなったAくん。お気に入りのコーナーも大人が見守らないと危険なため片付けて、「つぎはえのぐあそびするよ。」と声をかけホールに1人残ったAくんをドアの陰から見守ります。Aくんは『もうおしまいにしなければならない』状況は分かっているけれど収まりのつかない自分の気持ちと戦っていたのだと思います。しばらく静かに見守り頃合いを見て先生が次の遊びに使う綺麗な色の絵の具を見せに行き。気持ちの切り替えを手伝います。「自分で行くからほっといて。」とAくんはつぶやきます。「まってるよ。」とひとこと先生はその場を立ち去ります。しばらくするとAくんは顔を上げ涙を手で拭い次の活動場所に自分で移動することができました。

自分の力で気持ちを切り替えコントロールできた体験こそ今後同じような場面でうまく自分の気持ちを切り替えていく柔軟な心の育ちにつながると考えています。うまく切り替えていくため、視覚支援をしたり見通しを持たせる工夫をしたりする事はとても大切なことだと思いますが、本当に大切なのはこの葛藤を子ども自身が体験を通して乗り越える経験をさせることだと考えます。子どもも大人もエネルギーのいるしんどい作業ですけどね。