【おくむら先生の七色のひきだし】
~子どもの遊びに付き合う~
給食後の「絵本タイム」で絵本を書架から出して見ているA君。本の太さを確かめたり、表紙に描かれている文字を確かめているようです。「どんな本が好きなの?」の質問には答えてくれません。できれば好きな本を選んで本の内容を一緒に楽しみたいと声をかけたのですが・・・。
そもそも本に何が描かれているかではなく、本の装丁や表紙に描かれている出版年や会社名のロゴに興味があったA君です。 他者と一緒に関りながら遊ぶこと、楽しみを共有してほしいと思い声をかけたものの、絵本を一緒に読むことでそのかかわりを実現させることはまた次の機会としました。
A君が選んでいた絵本10冊は1ページ分がかなり厚くページ自体は少ないのですが太さは3センチほどの頑丈な装丁になっています。「よし。積み木にしちゃおう。」「ビルを建てるよ。」と横壁に2冊、その上に天井を積んでまた横壁を積むという作業を始めると、A君は「なんかいだてになる?」と興味津々。
「A君この壁もっておいて。」
「うん。」
と協働の作業が始まりました。
が、なかなかうまく完成させることができません。
「なにがおきた?」「なぜたおれた?」「どこがむずかしい?」と崩れるたびに質問します。
「バランスとか角度とか、振動とか」難しいことばを使うほど興味をもって傾聴してくれるA君です。
一度完成したところに他児が「やねとってたててみて。」と吹き抜けの家を提案してくれました。屋根をのせて安定を確保することが難しくなったため、横壁をはすかいに載せて積んでいくことに決めました。友だちも一緒に3人の共同作業が始まりました。子どもなりに早く成功させようと協力する姿を微笑ましく感じながら吹き抜けの家が完成。屋根がない分「さっきよりたかいおうちになったね。」「ふきぬけのてんじょうからアンパンマンをしんにゅうさせよう。」
遊びは広がります。
「絵本」を本来の用途として使わず積み木遊びに使ったことに色々お考えやご意見はあろうかと思いますが・・・。この遊びを通して他者ともコミュニケーションごっこ遊びを楽しめたことは事実です。
子どもの「好き」や「得意」「興味関心」を大切に遊びを柔軟に作り出していくことがつけたい力にアプローチできる近道かもしれません。