今回の『いろんな専門家に聞いてみよう』は理学療法士の濱田先生です。
~我が子の200万回~
少しだけ我が子のことを話します。
うちの子は小さい時からブランコが苦手でした。
どっしりおしりを地につけて、おもちゃのショベルカーで砂遊びをすることを心地よく思っていた息子にとっては、足がつかない状況、揺れる感覚、狭い座面・・・ブランコの要素のどれもが苦手だったと思います。
私と一緒に座って乗ることができた頃、お友だちはひとりで乗ることができていました。
何とか一人で乗れるようになった頃、お友だちは立ちこぎをしていました。
焦る私は必死に「足を伸ばして!曲げて!」と教え、本人もやってはみるものの、いつ伸ばすのか曲げるのかタイミングが分からず、ただの足の屈伸運動になっていました。
ブランコ(スイング)には、空間認知、ボディイメージ、揺れても身体を保つ体幹の筋力、鎖をもって支える手の力など、様々な能力が必要とされます。
すきっぷをご利用されているお子さんでも、揺れるという感覚そのものが苦手な方もおられます。
まずはスイングを低くして、足がつく状態でゆらゆら、少し高くしてゆらゆら、小さくゆらゆら、大きくゆらゆら、先生と一緒に乗る、お友だちの間にはさまって乗るなど、いろいろな段階を踏むことができます。
通い始めたころは、怖くてまったくスイングに乗れなかったお子さんも、先生と一緒なら乗れた、大好きなお友だちが乗っているから乗ってみよう、そして今では、一人で立って乗り「おーい」と呼んでくれるまで余裕がでてきたお子さんもおられます。
私たちが協調性を持った動きを獲得するには、200万回の繰り返しが必要と言われています。
200万回って想像できない回数です。
我が子も小学生になり、いつの間にか立ちこぎでブランコに乗れるようになっていました。
「あー、200万回こいだんだな」と思いました。
お友だちよりはかなりゆっくりかもしれませんが我が子の200万回を待てば良かったんだ、と我ながら反省したのでした。
遊びの中では、揺れたり、滑ったり、跳んだり、いろいろな動きがあります。
その動きが得意な子もいれば、苦手な子もいます。どんどんできる子もいれば、なかなか先に進めない子もいるかもしれません。
でもそれには、その感覚が苦手だったり、どう身体を使っていいか分からなかったり、空間の中で自分がどうなっているのかが分からなかったり・・・理由があります。
その理由がクリアできるまで、遊びの中で様々な動きを経験しながら、その子なりのペースで200万回に向かっているのだと思います。
日々焦ることもあると思いますが、「我が子の200万回」を待っていただけると嬉しいです。