おくむら先生の七色のひきだし

すきっぷ

【宿題】

子どもたちはなぜ宿題を頑張るのか考えたことはありますか?

放課後デイサービスに通う子どもたちも、“すきっぷ”に着くと宿題に取り組む子どもたちがたくさんいます。年度初めに本人と保護者と担当職員ですきっぷで宿題に取り組むかどうかを相談して決めます。

その取り組み方を見ていると、

「早く終わらせてすっきりして遊ぶんだ。」と頑張り始めるものの、早く終わらせた友だちの楽しい声が聞こえて来て、「僕も早く遊びたい。」という気持ちに負けそうになります。また、思いのほか難しい課題に苦戦し、気持ちが崩れそうになります。それでも子どもたちはくじけそうになる気持ちと戦い、職員に励まされたり、助けたりしてもらいながら宿題をやりきる子どもがほとんどです。

「子どもたちがこんなに頑張れるモチベーションはどこから来ているのだろう。」とふと考えます。

 

“宿題”はなぜ出されるのでしょう。

私が教師時代、宿題についてはこのような考えを持っていたように記憶しています。

まず、

1 学習習慣を身につけさせたい。

継続的に努力するという視点からも学習習慣を身につけることは子どもたちの将来に役に立つと考えていました。

2 授業内容を復習し、理解を深めさせたい。

人間の記憶力には限界があるため繰り返しの練習や復習によって定着を図りたいと考えていました。

3 課題解決や思考力を高める機会にしたい。

既習内容を基に自分の力で問題を解いたり考えたりすることで、課題解決力や思考力を高めてほしいと考えていました。

 

多くの先生方が、きっとこのような力に期待して“宿題”を出されているのだと思います。でも、低学年の子どもたちはこの意図を理解し、期待に応えるべく頑張るのではなく宿題に向かうモチベーションは他にあるのではないでしょうか。

まず「小学生になったら勉強をするもの」というすり込まれたステータス(決して否定しているわけではありません)によるプライドが頑張る気持ちにつながっている場合が多く、そのうち習慣化していく中で、宿題に取り組むと自分にとっていいことが沢山あることに気づき、高学年に向けて徐々に自分のためにという本物のモチベーションにつながっていくと思います。中には「勉強そのものが好き」「面白い」「楽しい」という子どももいますがごくわずかだと思います。単純に「宿題をしないと先生やお父さん、お母さんにしかられるから。」という場合もあるのではないでしょうか。

いずれにせよ、「面倒だけど」「いやだけど」「難しくてつらいけど」宿題に取り組むのは子どもなりに宿題に取り組む理由があるからです。そして、「宿題」に必要なエネルギーも様々です。「できてあたりまえ」ではないのです。宿題にエネルギーを使いすぎ疲弊している子どもも見かけます。宿題は本来自分の力で解決できる内容であるべきですが、発達段階や理解のレベルが宿題の内容に合っていないため負荷がかかりすぎていたり、簡単すぎて面白くなかったり、量が多すぎて負担になったり、子どもにとってその内容に取り組む価値が見えにくかったりすると宿題に向かう意欲が減退します。時には「宿題」は「苦行」となり勉強そのものが嫌いになってしまっている子どもも見受けられます。

すきっぷで宿題に取り組む子ども達の様子を見ながら、毎日、当たり前のように出される宿題ですが、子どもの力に任せすぎず、それぞれの子どもが抱えている事情(発達段階、得意・苦手、宿題に取り組む環境など)を理解した上で、「この宿題でどんな力をつけようと思っているのか」を子ども達と共有し、一人一人に合った取り組み方へのアドバイスや評価を工夫することが大切だと感じました。