おくむら先生の七色のひきだし

すきっぷ

 

 

【がまん】

 

「ばああば!(高いトーンでいかにも強い要求を伝える言い方。)野球しよ。」と誘う5歳になったばかりの孫。

 

夕食準備のフライを揚げ始めたとこ…。

「今!?」途中で止めることのできない状況で今すぐ要求を受け入れることは無理。

「ちょっと待って、今お料理が止められなくて…。」と事情を話しても、

「いやぁだ!今したい。ぼくたくさん打てるようになった。はやくぅ!はやくぅ!」

 

幼児期の子育てでは日常よく見られるやり取りですよね。

 

 

 

(正直、老体にムチ打ち、5歳の運動遊びの相手はしんどい。あわよくばじぃじに相手をしてもらって。という思いもあり。)

「ばぁば今忙しいわ。ちょっと待ってくれたらできるけど。じぃじは?」

「あかん。ばぁばやないとあかん。」

「でも今これ止めたら、おいしいサクサクフライにならないよ。みんながおいしいって食べれるフライ作りたいな。でき上ったら一緒にしよ。時計の針が数字3個進む間待って。」

 

 

 

こんなとき「我慢する力が足りない。少しは我慢して待てるようになってほしい。」このまま要求を受け入れては我慢する力が育たない。」と感じてしまうことが多いのではないでしょうか。

 

 

 

 

「がまんをする力」は将来に向けて育てておきたい大きな力ですが、ただ我慢する体験をさせることが自発的な「真のがまん」を育てることにはつながらないと思います。

自分の目的のために自分で考えて「がまん」を選ぶことができるようになってこそ将来に生かされる力だと考えます。

 

 

ですから状況を理解する力、目的を達成するためにはどうすることが自分にとって得かを判断する力が育つ前に抑圧によって我慢させられる経験を積むことは、むしろ意欲や向上心を弱めてしまいます。

3歳頃までは自分の欲求を伝えようとする気持ちが大きく成長する時期です。その気持ちを受け止めつつ実現しにくい状況であればうまく切り替える工夫をすることが大切だと思います。

 

 

 

~3歳まで~

わがままにも見える要求も抑制ではなく切り替えの工夫を!

 

~4歳~

我慢の後にくるご褒美(別の満足感)の工夫、提案、成功体験の工夫。

「我慢したらこんないいことがあるよ。」

「我慢したからもっといいことがあった。」

 

~5歳頃以降~

我慢した方がいいなと思える情報を伝える。

我慢できたとき「あたりまえ」ではなくしっかりほめることが大切。

そうすることで、我慢する気持ちや行動を強化することができます。

 

 

 

5歳になったばかりの孫。

 

運動面でもぐんと成長し、バットにボールを当てるという今までできなかったことが一度でもできると「おれ、しょうへいみたいやろ。」と良い勘違いをしてくれる。

もっと成功させてできる自分を確認したくて仕方がありません。そのような動機から出た要求です。

 

 

少し事情も分かってほしい時期。

ですからただ「待って。」ではなく、揚げ物を始めたところで今止めてしまうと、夕食がおいしく食べられないこと。この作業が終われば付き合えるので待ってほしいこと。情報とお願いを伝えます。

 

すぐに納得できるわけがありませんが「はやくぅ!」とブツブツ言いながら、手に持っていたバット(幼児用の硬めのスポンジでカバーしてある)で軽く床を叩きつけていました。

 

すかさず「待ってくれてありがとう。おいしいおかず作るからね。」とことばをかけ、「待ってるだけでは退屈だからお手伝いして。」と待ち方の提案もしました。

 

 

それには応じませんでしたが、「おいしいそうなにおいやなぁ。」と揚げ物のにおいをかぎながら待つことができました。

揚げ物が終わると一旦料理の手は止め(私としては盛り付けもしてしまいたかったのですが。)バッティングに付き合いました。

待ってくれたことも含め、5回に1回しか当たらない打ち方にもプラス評価をして、また良い勘違いをさせて終わりました。

 

 

 

冬休み、子どもたちは家庭で過ごす時間が増えると思います。改めて我慢のさせ方について考えてみてください。

 

我慢させないとわがままな子どもになってしまうのではなく、子どもの心の要求をできる限り受け入れ、我慢しなければならない場合は我慢したことに対する十分な評価を返すことで、自己主張する力と自己抑制する力を調整しながら、「自ら我慢していく力」を子ども自身が育んでいくのではないでしょうか。