おくむら先生の七色のひきだし

すきっぷ

 

 

臨床発達心理士の奥村康枝です。

 

*すきっぷ*でも新しいお友だちを迎え4週間が経ちました。

少しずつ不安や緊張が解かれていく様子が見られ、元気な声が響いています。

 

 

「元気な声」には喜ぶ声や笑い声ばかりではなく、自己主張をしっかりしたいがための泣き声や怒った様子の声も含まれますが、まずは心理解放し、自己主張ができるようになることを優先し関わっています。

 

今後、先生や友達との運動遊びや活動を通して社会性や気持ちをコントロールする力も育てていけるよう関わっていきたいと思います。

 

 

 

この時期、子どもたちは、それぞれの発達段階に応じ、年度替わりという新しい環境に対応していくための心構えを作り頑張っています。

 

しかし、その状況がわかってくればくるほどどれくらい頑張らなくてはいけないのかがわかり、大きな負担感につながって疲れが出てしまうのが今週あたりからだと思います。

 

「園に行くことを嫌がる」

「学校に行くことに大きな負担感をもってしまう」

この状況は子どもの発達や特性と環境との相互作用によってどの子にも起こりうることだと思います。

 

登園や登校がスムーズにできなくなったときの初期の対応はとても大切です。

 

そしてこういう時こそ、保育園や幼稚園、学校との連携が必要になってくると思います。

 

お家の方は休みたい気持ちを受け入れていいのか、励まし背中を押せばいいのか迷い不安になられると思います。

 

 

 

どんな対応をすればいいのかは一人一人状況によって違いますが、まず子どもの「しんどい。」「つらい。」「元気が出ない。」に共感し受け入れたうえで、子どもたちの様子をよく観察したり、子どものことばに耳を傾けたりしながら、励まし背中を押すべきか、休んで休憩させるべきかを考えてみてください。

 

 

背中を押して頑張らせたときは園や学校に、しんどい思いを抱えながら登園・登校したことを伝えてください。

 

先生方も「しんどい思いをしながらも頑張ってきてくれたんだ。」とわかれば環境や活動に対する配慮やことばかけを考えてくださるはずです。

 

 

そして「しんどかったけど行けば楽しいこともいいこともあった。」という体験につながり朝の負担感や不安を軽減することにつながります。

 

長期化(子どもの状況によっては長期の見通しでゆっくり休むことが必要なこともありますが)したり、深刻化したりする前に一人で悩まず園や学校に相談してください。

 

勿論すきっぷにも相談してくださいね。

 

今年度も引き続き、子育てに参考になる情報を発信させていただきたいと思います。

 

 

 

【今できる事を自信につなげて】

 

先日高校生になったはるやくん(仮名)のお母さんとお話をしました。

 

「人と接することが苦手で声を掛けてもらうことは嫌ではなくむしろ嬉しいはずなのに、どのようにリアクションをすればいいのか分からず無視をしてしまったり、その場から逃げるような態度になってしまったりするので、誤解を受けたり結果的には失礼な態度になってしまったりすることがもったいないです。」と話されました。

 

 

相手の心の中がイメージしにくいはるや君は、そこにいる人が何を見ていてどう考えているのか分からず、不安になってしまい人を避けたふるまいになってしまうようです。

 

入学式もたくさんのギャラリーに囲まれ不安と過度の緊張で話が聞けず、下を向いて動けなかったようです。
色々な人がいて、色々な声の掛け方がある中で場や状況に応じた応答に自信はなく、コミュニケーションが成立しにくい状況です。

 

 

はるや君には家族や学校の先生など慣れた人との信頼関係をベースに、「人っていいものだよ。」「伝えることでいいことがいっぱいある。」という体験を通してコミュニケーションの力を伸ばしてほしいと思います。

 

 

コミュニケーションは苦手なはるや君ですが、とても得意なことがあります。

 

誰とも接することなく黙々と取り組める定規と分度器を使って描く模様を作成することが得意で、クオリティーの高い美しい作品を作り上げることができます。

 

 

もともとこの絵には自信があったようですが、休み時間に描いている時、担任の先生が気付かれ本人の自信につながる言葉かけをしていただいたようです。

 

どんな心の動きがあったのか定かではありませんが、卒業前には、関わってもらった先生たちに「YesかNoかだけで答えてほしい。」という前置きで「これいりますか?」と自分の描いた絵をプレゼントしたようです。

 

もちろんこの絵を初めて見た先生方は驚き称賛のリアクションをされたと思います。

 

 

このやりとりが少し本人の自信につながり最近は色々なことに挑戦してみようという前向きな思いが伝わる言葉が聞けるようになったということもお母さんが話してくださいました。

 

得意、今できることを自信に繋げ苦手を克服していけるエネルギーにして行きたいですね。