今年度2回目の『いろんな専門家に聞いてみよう』は、言語聴覚士の島嵜さんです。
「お口ポカン」とことばの発達
ふと気が付くとこどもの口が開いている。
そんなことはありませんか?
歯並びの影響や鼻炎による鼻づまり、口呼吸に慣れてしまっているなど、こどもたちの口が開きっぱなしになってしまう原因は様々ですが、そのうちの一つに「口周りの筋力が十分に育ち切っていない」というものがあります。
そもそも口が開きっぱなしだと何が問題なのでしょう。
いわゆる「お口ポカン」な状態ですが、虫歯や感染症になりやすかったり、歯並びや姿勢が悪くなったりするほか、この状態が長く続いた場合、ことばの発達という点においても少なからず影響が出てきます。
それと言うのも、口が開きっぱなしであるということは唇に力が入っていないということでもあるため、お口ポカンが長く続くと口周りの筋力が鍛えられず、「パ」「バ」「マ」といった唇で作る音に影響が出てきてしまう可能性があるのです。
また、口周りの筋力と同時に舌の筋力も低下していくため、滑舌も悪くなってしまいます。
お口ポカンになる原因が様々であることは先にも述べた通りなのですが、原因が特に口周りの筋力にある場合、その背景には柔らかい食べ物が増えたこと、よく噛まずに水分で流し込んでしまうこどもが増えていること、じゃぼん玉といった口を使う遊びの機会が少なくなってきていることなどがあると考えられます。
逆に言えば、硬いものを食べて、噛む回数を増やせば口周りの筋力は鍛えられていくということでもあります。
特別なことではありませんがよく噛んで食べることはそれだけ大切だということです。
また、直接的に口を使う遊びだけでなく、外遊びなどの体を動かす遊びにも口周りの筋力を鍛える効果があります。
こどもたちの脳は体を動かせば動かすほど上手な体の動かし方を学んでいきます。
ここで重要なのが、たくさん体を動かして上手な体の動かし方を学んだ脳は運動以外の場面でも上手に体を動かせるようになっていくということです。
力加減や複数の動きを同時に行うといった体の動かし方を学んでいく中で、口周りも上手に動かせるようになり、自然と口周りの筋力が鍛えられていくというわけです。
ぜひ、口周りの発達とは関係ないと思わず、全身を使って一緒に遊ぶ機会を作ってみてはいかがでしょうか。
しっかり話せているように見えて、ふと気が付くと口が開いている。
そんな子はまだまだ口周りの筋力が足りていないのかもしれません。
硬い物を噛みしめるような機会は食が豊かになるにつれて少なくなってきました。
外遊びの機会も酷暑などにより限られてきてしまっています。
よく噛んで食べる、全身を使って遊ぶ、一昔前と比べて口周りの筋力が鍛えられづらい、お口ポカンになりやすい今だからこそ、あらためて大切にしていってほしいと思います。