おくむら先生の七色のひきだし

すきっぷ

臨床発達心理士の奥村康枝です。

*すきっぷ*でも新しいお友だちを迎え3週間が経ちました。少しずつ不安や緊張が解かれていく様子が見られ元気な声が響いています。「元気な声」には喜ぶ声や笑い声ばかりではなく、自己主張をしっかりしたいがための泣き声や怒った様子の声も含まれますが、まずは心理解放し自己主張ができるようになることを優先し関わっています。今後、先生や友達との運動遊びや活動を通して社会性や気持ちをコントロールする力も育てていけるよう関わっていきたいと思います。

この時期、子どもたちは、それぞれの発達段階に応じ、年度替わりという新しい環境に対応していくための心構えを作り頑張っています。しかし、その状況がわかってくればくるほどどれくらい頑張らなくてはいけないのかがわかり大きな負担感につながって疲れが出てしまうのが連休前あたりからだと思います。「園に行くことを嫌がる」「学校に行くことに大きな負担感をもってしまう」この状況は子どもの発達や特性と環境との相互作用によってどの子にも起こりうることだと思います。

登園や登校がスムーズにできなくなったときの初期の対応はとても大切です。そしてこういう時こそ、保育園や幼稚園、学校との連携が必要になってくると思います。お家の方は休みたい気持ちを受け入れていいのか、励まし背中を押せばいいのか迷い不安になられると思います。どんな対応をすればいいのかは一人一人状況によって違いますが、まず子どもの「しんどい。」「つらい。」「元気が出ない。」に共感し受け入れたうえで、子どもたちの様子をよく観察したり、子どものことばに耳を傾けたりしながら、励まし背中を押すべきか、休んで休憩させるべきかを考えてみてください。背中を押して頑張らせたときは園や学校に、しんどい思いを抱えながら登園・登校したことを伝えてください。

 

先生方も「しんどい思いをしながらも頑張ってきてくれたんだ。」とわかれば環境や活動に対する配慮やことばかけを考えてくださるはずです。そして「しんどかったけど行けば楽しいこともいいこともあった。」という体験につながり朝の負担感や不安を軽減することにつながります。

長期化(子どもの状況によっては長期の見通しでゆっくり休むことが必要なこともありますが)したり、深刻化したりする前に一人で悩まず園や学校に相談してください。勿論すきっぷにも相談してくださいね。

今年度も引き続き、子育てに参考になる情報を発信させていただきたいと思います。

 

自信が勇気と柔軟性につながります。*

先日高校生になったゆうまくん(仮名)。感覚の偏りがあり、慣れた感触の服しか受け入れられず制服が着れなかったゆうまくんが、3月末の中学校の卒業式にはピシッと制服を着て卒業式に参加することができました。卒業証書を受け取る姿は自信に満ち堂々としていました。

実はゆうまくんは学校がしんどくて、学校に行くとすごく疲れるので小学校2年生のころから中学2年生まであまり学校には行けていませんでした。読み書きが苦手なこともあり読み書き中心の学校での学習は負担が大きく疲れてしまいます。いろいろな感覚過敏もありいろいろな音の聞こえる学校という環境はなんだか心もざわざわして落ち着ける場所ではなかったのです。また、行ったことのない場所ややったことのないことについては、今までの体験を生かして想像することが苦手で不安になり挑戦する勇気がなかなか持てないのです。いろいろな人が集まる学校はイレギュラーなことも多く、予定変更が苦手なゆうまくんは学校に行くには私たちが想像できないような勇気とエネルギーが必要でした。

ゆうまくんのお母さんはゆうまくんに自信をつけてもらえればとゆうまくんが行ける場所を探し、安心できる場所で興味関心を持ち取り組める体験を積み上げることを全力で応援してこられました。車が好きで自分でもバイクや車(おもちゃの車も含め)をメンテナンスすることに興味を持ち、ネットで情報を集め実際に改造やメンテナンスをする技術を身に着けました。そのうち、車の修理工場から声をかけてもらいお手伝いに通うようになりました。いろいろな仕事を任され「やりきる体験」「感謝されお礼を言われる体験。」「自分がしたことをほめてもらえる体験」「興味関心が広がる体験」「やってみようと挑戦する体験」「いろいろな人とかかわる体験」を通して自信を回復し、そのことがいろいろなことに取り組んでみようとする「勇気」とうまくいかなくても「まっいいか。そういうこともあるよね。」という物事を柔軟に受け止めることができる心も育ちました。この育ちとともに学校への抵抗感は薄らぎ自分のペースですが学校へも足を向け、挑戦の場を学校に移すことができるようになってきたのです。

長かった道のりでした。この間、子どもの伸びていく力を信じ全力で応援されたお父さん、お母さんのご苦労はこの場では語りつくせません。ゆうまくんは今「できることは増えてきたけど、すごく頑張っているんや。次々期待しないでほしい。自分のペースで頑張りたい。」と語ります。

 

「自信と自己肯定感」は子どもに大きな変化をもたらすことを私たち支援者にも教えてくれたゆうまくんです。